神奈川県総合リハビリテーションセンター
七沢更生ライトホーム 矢部 健三
1.はじめに
七沢更生ライトホーム(以下「当施設」)では、録音図書がカセットテープからDAISY形式CDへ移行するのに伴い、2000年からDAISY図書再生機の紹介・訓練を行なってきた。また、2004年にDAISY録再機が日常生活用具給付制度の対商商品となってからは、録音・編集などの操作訓練も開始している。
今回は、2011年4月から2012年1月に、当施設に在籍した利用者32名(訪問訓練利用者は除く)について、DAISY機器操作訓練の実施状況を報告する。
2.利用者の状況
表1〜表3に、利用者の年齢階級別、障害・疾患別、障害等級別の状況を示した。
表1 利用者の年齢階級別状況(単位:人)
|
〜19 |
20〜29 |
30〜39 |
40〜49 |
50〜59 |
60〜69 |
70〜 |
計 |
人 |
1 |
6 |
4 |
5 |
6 |
5 |
5 |
32 |
% |
3.1 |
18.8 |
12.5 |
15.6 |
18.8 |
15.6 |
15.6 |
100.0 |
表2 利用者の障害・傷病別状況(単位:人)
|
中枢性 疾患 |
糖尿病 網膜症 |
網膜色素 変性症 |
他の 先天 |
緑内障 |
視神経症 ・萎縮 |
他の 疾患 |
未熟児 網膜症 |
計 |
人 |
3 |
6 |
7 |
4 |
3 |
3 |
5 |
1 |
32 |
% |
9.4 |
18.8 |
21.9 |
12.5 |
9.4 |
9.4 |
15.6 |
3.1 |
100.0 |
※ 表中の「中枢性疾患」は、脳腫瘍や脳血管障害などを表す。
表3 利用者の障害等級別状況(単位:人)
|
1級 |
2級 |
3級 |
4級 |
5級 |
6級 |
計 |
人 |
16 |
12 |
4 |
0 |
0 |
0 |
32 |
% |
50.0 |
37.5 |
12.5 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
100.0 |
3.訓練前の状況
当施設では、利用開始時のアセスメントにおいて、情報提供施設への登録や、録音図書の利用、DAISY機器の所有などの状況を聞き取っている。表4には、その結果を示した。当施設利用開始時に、情報提供施設への利用登録を済ませていた者は、14名(43.8%)である。
表4 アセスメント状況(単位:人)
|
情報提供施設 利用登録者 |
録音図書 利用者 |
機器 所有者 |
人 |
14 |
12 |
10 |
% |
43.8 |
37.5 |
31.3 |
4.訓練の実施状況と実施内容
4−1 訓練の実施状況
当施設では、DAISY機器の操作訓練を、コミュニケーション訓練と日常生活動作技術訓練で実施している。表5には、それぞれの訓練科で実施した人数と割合を示した。
表5 DAISY機器訓練実施状況(単位:人)
|
COM |
TDL |
C&T |
実数 |
人 |
15 |
13 |
8 |
20 |
% |
46.9 |
40.6 |
25.0 |
62.5 |
※表中の「COM」はコミュニケーション訓練、「TDL」は日常生活動作技術訓練、「C&T」はコミュニケーション訓練と日常生活動作技術訓練両方を表す。
4−2 コミュニケーション訓練での実施内容
表6にはコミュニケーション訓練での実施内容、表7には実施回数を示した。コミュニケーション訓練では、主に再生操作、見出し移動について紹介・訓練を行なっている。見出し移動まで訓練できた者は7名で、訓練実施者数の半数を下回っている。訓練回数は、8割の者が10回以下で終了している。なお、訓練体制は2〜4名の小グループで、点字訓練など他の訓練を受ける利用者と一緒に実施している。使用機器は、プレクストークのPTN1とPTN2である。
表6 DAISY機器訓練(COM)実施内容(単位:人)
|
各部の名称 |
再生操作 |
見出し移動 |
登録援助 |
計 |
人 |
15 |
15 |
7 |
7 |
15 |
% |
100.0 |
100.0 |
46.7 |
46.7 |
100.0 |
表7 DAISY機器訓練(COM)実施回数(単位:人)
|
1〜5 |
6〜10 |
11〜15 |
16〜20 |
21〜 |
計 |
人 |
8 |
4 |
0 |
0 |
3 |
15 |
% |
53.3 |
26.7 |
0.0 |
0.0 |
20.0 |
100.0 |
4−3 日常生活動作技術訓練での実施内容
表8には日常生活動作技術訓練での実施内容、表9には実施回数を示した。日常生活動作技術訓練では、再生操作のほか、録音、編集などの操作について紹介・訓練を行なっている。訓練回数は、8割の者が10回以下で終了している。なお、訓練体制は利用者・職員の1対1である。使用機器は、プレクストークのPTR2とPTP1であるが、利用者が所有している場合にはほかの機種でも訓練を行なっている。
表8 DAISY機器訓練(TDL)実施内容(単位:人)
|
内容物確認 |
各部の名称 |
再生操作 |
見出し移動 |
録音操作 |
ページ移動 |
しおり機能 |
メモ録音 |
編集操作 |
ラインイン |
バックアップ |
電卓機能 |
各機種紹介 |
計 |
人 |
3 |
10 |
10 |
5 |
11 |
3 |
3 |
3 |
4 |
3 |
4 |
1 |
1 |
13 |
% |
23.1 |
76.9 |
76.9 |
38.5 |
84.6 |
23.1 |
23.1 |
23.1 |
30.8 |
23.1 |
30.8 |
7.7 |
7.7 |
100.0 |
※表中の「ラインイン」はカセットテープなど外部機器からの録音操作を表す。
表9 DAISY機器訓練(TDL)実施回数(単位:人)
|
1〜5 |
6〜10 |
11〜15 |
16〜20 |
21〜 |
計 |
人 |
7 |
4 |
0 |
2 |
0 |
13 |
% |
53.8 |
30.8 |
0.0 |
15.4 |
0.0 |
100.0 |
4−4 訓練実施時の問題点
DAISY機器の操作訓練を実施したときの問題点を以下にまとめる。
1)見出し移動に必要な階層構造の理解が難しい。
2)操作手順の理解に時間がかかる他、記憶の定着が難しい者も多い。
3)タイトル変更やメディア変更の概念が理解できず、聞きたいものを再生できなかったり録音先を正しく選べなかったりすることが多い。
4)録音ボタンを長押ししてしまい、DAISY形式の録音ではなく、意図せずメモ録音してしまうことが多い。
5.訓練後の状況
表6でも示したように、コミュニケーション訓練で録音図書利用訓練を実施した15名のうち、情報提供施設の利用登録を訓練時間内に行なった者は7名(46.7%)であった。また、訓練時間外に個人で新たに利用登録を行った者も4名いた。この結果、情報提供施設への利用登録者は25名(78.1%)に上昇している。
表10には機種別のDAISY機器所有状況を示した。当施設利用中あるいは退所時にDAISY機器を新たに購入した者は7名(46.7%)である。
表10 機種別DAISY機器所有状況(単位:人)
|
PTR2 |
PTP1 |
LINK |
計 |
人 |
11 |
3 |
3 |
17 |
% |
64.7 |
17.6 |
17.6 |
100.0 |
※表中の「LINK」は、プレクストーク・リンクポケット(PTP1/LINK)を表す。
6.おわりに
当施設のDAISY機器訓練は、コミュニケーション訓練では基本的な再生操作を中心に実施し、日常生活動作技術訓練ではページ移動やしおり機能などその他の操作と、録音や編集などの操作を中心に実施してきた。プレクストーク・リンクポケットでの視覚障害者総合情報ネットワーク・サピエの利用については、当施設にインターネットに接続できる無線LANの設備がなく、現時点で実施できていない。すでに3名の購入者もいることから、無線LAN設備を設置するなど、訓練環境を早急に整備することが必要である。
最終更新日: 2012年2月20日(月)
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