神奈川県総合リハビリテーションセンター
七沢更生ライトホーム 矢部 健三
新聞や書籍など一般の活字が利用できない視覚障碍者は、情報の入手に大きな障害を抱えている。七沢更生ライトホームでは、この障害を軽減するために、点字の読みや録音図書利用などの訓練を行っている。今回は、この録音図書利用訓練、特に近年注目を集めている録音図書のネット配信について報告する。
点字・録音図書は、ボランティアによって作製され、点字図書館などを通じて貸し出される。点字図書館では、主に電話で視覚障碍者の希望を受け付け、郵送で点字・録音図書を貸し出してきた。近年のインターネットの普及に伴い、2000年以降全国視覚障碍者情報提供施設協会などでは、点字・録音図書のネット配信サービスを開始した。
これまではパソコンで録音図書のネット配信を利用していたが、昨年9月に専用端末が開発・発売された。当施設では、メーカーの協力を得て昨年12月に利用者を対象とした体験会を実施した。この端末は無線LANを介してネットにアクセスし、録音図書のダウンロードやストリーミング再生ができる。体験会当日は13名が参加した。メーカーからは講師派遣の他、端末6台とモバイル無線LAN回線の貸し出しを受け、図書の検索、ダウンロード、ストリーミング再生などを体験した。
個別訓練では、2名に対してこの端末の操作訓練を実施した。
事例A:厚木市在住、63歳、女性。視覚障害1級、網膜色素変性症。2011年5月通所利用。訓練回数:7回。内容物の確認、各部の名称説明、基本的な再生操作、CDからの録音図書取り込み、録音操作、編集操作を実施。
事例B:相模原市在住、70歳、女性。視覚障害2級、右)網膜欠損 左)硝子体出血。2011年4月通所利用。訓練回数:4回。各部の名称説明、基本的な再生操作、CDからの録音図書取り込み、録音操作、編集操作を実施。
当センターには無線LANのインターネット回線がなく、録音図書のネット配信利用については口頭で説明するにとどめざるを得なかったため、いずれの事例も現時点で自宅での利用が不可能である。今後は録音図書のネット配信が視覚障害者の有力な情報入手手段となることが予想される。今回実施したような体験会は概要紹介の機会としては有効であるが、録音図書のネット配信を利用できるようになるには個別訓練が必要である。そのためにも、施設でインターネット接続無線LAN回線を早急に用意することが重要である。
最終更新日: 2012年2月20日(月)
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