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中途視覚障害者のDAISY図書利用状況

−七沢ライトホーム退所者の場合−

 

神奈川県総合リハビリテーションセンター

七沢ライトホーム     矢部  健三  

 

1 はじめに

 視覚障害者への録音図書の提供媒体がカセットテープ(コンパクトカセット)からDAISY形式のCDに移行しつつある。七沢ライトホーム(以下「当施設」)では、中途視覚障害者への生活訓練の一環として、当施設利用者に対し、DAISY図書再生機の操作訓練ならびにDAISY図書の利用訓練を20002月から実施してきた。しかしながら、当施設利用者が退所後の生活でどのようにDAISY図書を利用しているのかについては把握できていなかった。そこで、今年4月、当施設退所者を対象に、在宅サービス等の利用調査を実施するのに合わせて、DAISY図書の利用状況についても調査した。

 本稿では、当施設で実施しているDAISY図書再生機の操作訓練ならびにDAISY図書利用訓練の内容を紹介するとともに、その調査結果を報告する。

 

2 当施設のDAISY訓練

 表1に使用機器、表2に訓練プログラムの概略を示した。

 当施設では、19993月から実施された厚生省(当時)の「視覚障害者情報提供システム整備事業」により、DAISY図書製作用パソコン2台、DAISY図書再生機プレクストーク(TK-300B)10台の貸与を受けるとともに、DAISY録音図書2,580タイトルの配布を受け、DAISY図書再生機の操作訓練ならびにDAISY図書利用訓練の実施体制を整えた。

1 DAISY訓練で使用している機器

再生専用機

プレクストークTK-300B

プレクストークPTN1

録音再生機

プレクストークPTR1

プレクストークPTR2

ビクタリーダー レコーダーVRC-104

携帯型再生機

VRストリーム

PCソフト

NetPLEXTALK

 訓練プログラムでは、DAISY図書の説明からDAISY図書再生機の基本操作、DAISY図書の利用、録音・編集操作、びぶりおネットの紹介までを初期・中期・終期の3段階に分けている。しかし、初期から終期までの訓練を連続して実施することはない。初期段階の「DAISY図書の貸し出し」を実施した時点で、訓練は一旦中断している。実際にDAISY図書を利用する中で各種機能の習得を希望した場合や、個人でDAISY図書再生機を購入した場合などに、中期以降の訓練を実施している。

2 DAISY訓練のプログラム

段階

項目

内容

初期

情報提供施設の紹介

神奈川県ライトセンターなど

DAISY図書の説明

長所と短所

DAISY図書再生機の基本操作

各部の名称説明

電源のON/OFF

CDの出し入れ

再生/停止

音量・音質・音速の調整

DAISY図書の貸し出し

中期

DAISY図書再生機の実用操作

各部の名称説明

ページ移動

しおり機能

見出し移動

情報提供施設の利用

利用登録援助

蔵書の利用

終期

DAISY図書録音再生機の録音操作

会議録音

テープ図書のDAISY変換

編集操作

バックアップ

ビブリオネットの紹介

図書の検索

再生ソフトの操作

 

3 当施設退所者の在宅サービス等利用調査

 今年4月に実施した当施設退所者対象の在宅サービス等利用調査の方法・内容は以下の通りである。

調査対象:19994月〜20083月の当施設利用者から無作為に抽出した80

調査方法:電話による本人への聞き取り調査ならびに訓練記録の参照

調査内容:基本属性、在宅サービス利用状況、DAISY図書利用状況等

実施時期:20084

 DAISY図書利用状況については、DAISY図書再生機を持っているか、どれぐらいの頻度で使用しているか、どのようなものを聞いているか、の3点について答えてもらった。

 

4 アンケート回答者の状況

 80名の調査対象者のうち72名から有効回答を得られた(回収率90.0%)

 表3〜表5に、回答者の年齢構成、障害原因、障害等級を示した。また、表6には、回答者が当施設を退所した時点での点字読み能力を示した。

 年齢構成では60代が最も多く、障害原因では網膜色素変性症が最も多い。障害等級では12級が95%を占める。点字読み能力では、読速度が10分未満に達している者が最も多く、紹介程度で終了した者がこれに続いている。

3 アンケート回答者の年齢構成(単位:「人」)

 

19以下

20

30

40

50

60

70以上

 

 

0

2

3

7

8

11

7

38

 

 

0

3

3

7

6

10

5

34

 

 

0

5

6

14

14

21

12

72

 

 

0.0

6.9

8.3

19.4

19.4

29.2

16.7

100.0

 

 

4 アンケート回答者の障害原因(単位:「人」)

 

糖尿病

ベーチェット病

中枢性

網膜剥離

緑内障

他の疾患

色変

未熟児

他の先天

不明

5

3

4

2

6

5

7

0

5

1

38

4

1

0

1

1

5

12

3

5

2

34

9

4

4

3

7

10

19

3

10

3

72

12.5

5.6

5.6

4.2

9.7

13.9

26.4

4.2

13.9

4.2

100.0

※ 表中の「糖尿病「は糖尿病網膜症、「中枢性」は脳腫瘍や脳血管障害など頭蓋内疾患、「色変」は網膜色素変性症、「未熟児」は未熟児網膜症を示す。

 

5 アンケート対象者の障害等級(単位:「人」)

 

1

2

3

4

5

6

26

11

1

0

0

0

38

26

6

1

0

1

0

34

52

17

2

0

1

0

72

72.2

23.6

2.8

0.0

1.4

0.0

100.0

6 アンケート対象者の点字読み能力(単位:「人」)

 

10分未満

1030分未満

30分以上

紹介程度

構成のみ

未習

7

4

1

14

5

7

38

16

1

2

6

1

8

34

23

5

3

20

6

15

72

31.9

6.9

4.2

27.8

8.3

20.8

100.0

※ 表中の「10分未満」は、読速度が32マス18行で1ページ10分未満に到達した者、「1030分未満」は、読速度が32マス18行で1ページ1030分未満に到達した者、「30分以上」は、読速度が32マス18行で1ページ30分以上に到達した者、「紹介程度」は、清音・濁音・拗音などの単語読みで訓練を終了した者、「構成のみ」は、50音などの構成学習のみで訓練を終了した者、「未習」は、点字読み訓練をまったく受けていない者を示す。

 

5 結果と考察

 厚生省が「視覚障害者情報提供システム整備事業」を実施してから約10年を経過した現在、在宅の視覚障害者にどれぐらいの割合でDAISY図書再生機が普及しているのだろうか。表7〜表8にアンケート回答者のDAISY図書再生機所有状況を年齢別、点字読み能力別に示した。72名の回答者のうち37名がDAISY図書再生機を所有していた(所有率51.4%)。年齢では40代以上の者の所有率が高く、軒並み半数を超えている。高齢者は新しい機器の使用に消極的、と思われがちだが、60代以上のDAISY図書再生機所有率は全体のそれを上回っており、積極的にDAISY図書再生機を利用しようとする姿がうかがえる。点字読み能力別に所有率を比較すると、1030分の者の所有率が低い他はいずれも50%以上の所有率で、点字読み能力との顕著な関係はみられない。

7 年齢別DAISY図書再生機所有状況(単位:「人」)

 

19以下

20

30

40

50

60

70以上

所有者数

0

2

1

9

7

11

7

37

所有率()

0.0

40.0

16.7

64.3

50.0

52.4

58.3

51.4

8 点字読み能力別DAISY図書再生機所有状況(単位:「人」)

 

10分未満

1030分未満

30分以上

紹介程度

構成のみ

未習

所有者数

13

1

2

10

3

8

37

所有率()

56.5

20.0

66.7

50.0

50.0

53.3

51.4

 では、DAISY図書再生機を所有している者はどれぐらいの頻度で使用しているのだろうか。表9にはDAISY図書再生機の使用頻度を示した。ほぼ毎日使用していると答えた者が最も多く50%を越える一方、ほとんど使わないと答えた者も13.5%いた。

 表10には年齢別のDAISY図書再生機使用頻度を示した。DAISY図書再生機をほぼ毎日使用すると答えた者と、週23回使用すると答えた者は、30代以下では33.3%に過ぎないが、40代以上では64.7%に達しており、ここでも中高年の視覚障害者がDAISY図書を積極的に利用している様子がうかがえる。

 表11には点字読み能力別のDAISY再生機使用頻度を示した。DAISY図書再生機をほぼ毎日使用すると答えた者は、点字読速度が10分未満の者と、点字読み訓練を紹介程度で終了した者、点字読み訓練の経験がない者で割合が高い。点字による読書が可能な者も、DAISY図書を積極的に利用していることがわかる。

9 DAISY図書再生機使用頻度(単位:「人」)

 

ほぼ毎日

23

週1回

23

1

ほとんど使わない

5

3

0

2

1

2

13

14

1

2

2

2

3

24

19

4

2

4

3

5

37

51.4

10.8

5.4

10.8

8.1

13.5

100.0

 

 

 

 

 

 

10 年齢別DAISY図書再生機使用頻度(単位:「人」)

 

20

30

40

50

60

70以上

ほぼ毎日

0

(0.0%)

0

(0.0%)

7

(77.8%)

2

(28.6%)

7

(63.6%)

3

(42.9%)

19

23

1

(50.0%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

2

(28.6%)

1

(9.1%)

0

(0.0%)

4

週1回

0

(0.0%)

0

(0.0%)

1

(11.1%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

1

(14.3%)

2

23

1

(50.0%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

1

(9.1%)

2

(28.6%)

4

1

0

(0.0%)

0

(0.0%)

1

(11.1%)

1

(14.3%)

1

(9.1%)

0

(0.0%)

3

ほとんど

使わない

0

(0.0%)

1

(100.0%)

0

(0.0%)

2

(28.6%)

1

(9.1%)

1

(14.3%)

5

2

(100.0%)

1

(100.0%)

9

(100.0%)

7

(100.0%)

11

(100.0%)

7

(100.0%)

37

11 点字読み能力別DAISY再生機使用頻度(単位:「人」)

 

10分未満

1030分未満

30分以上

紹介程度

構成のみ

未習

ほぼ毎日

7

(53.8%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

6

(60.0%)

1

(33.3%)

5

(62.5%)

19

23

2

(15.4%)

1

(100.0%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

1

(33.3%)

0

(0.0%)

4

週1回

1

(7.7%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

1

(12.5%)

2

23

1

(7.7%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

2

(20.0%)

1

(33.3%)

0

(0.0%)

4

1

1

(7.7%)

0

(0.0%)

1

(50.0%)

1

(10.0%)

0

(0.0%)

0

(0.0%)

3

ほとんど使わない

1

(7.7%

0

(0.0%)

1

(50.0%)

1

(10.0%)

0

(0.0%)

2

(25.0%)

5

13

(100.0%)

1

(100.0%)

2

(100.0%)

10

(100.0%)

3

(100.0%)

8

(100.0%)

37

 最後に、これらの者がどのようなDAISY図書を聴いているのかについて触れたい。表12にはDAISY図書の利用状況を示した(複数回答可)。最も多くの者が聴いているのはやはり小説で、各種団体の会報などお知らせ類がそれに続いている。利用者自身が録音したと思われるものを聞いていたのは、僅か2(2.7%)で、録音機能を使用している者が非常に少ないことがうかがえる。

12 DAISY図書の利用状況(単位:「人」)

 

小説

雑誌

音楽などCD

お知らせ

他の書籍

教科書

授業のまとめ

取扱説明書

利用者数

21

2

2

12

5

5

1

2

利用率(%)

56.8

5.4

5.4

32.4

13.5

13.5

2.7

5.4

※ 表中の「お知らせ」は各種団体の会報などを示す。

 

6.おわりに

 今回の調査から、アンケート回答者のDAISY図書再生機所有率が50%を超え、録音図書のDAISY移行に、ある程度対応できていることがわかった。これは、20002月から実施したDAISY図書再生機の操作訓練ならびにDAISY図書の利用訓練の成果と言ってよいだろう。しかし、DAISY図書のネット配信や携帯型DAISY再生機の普及など、視覚障害者の読書環境はこれからも大きく変化するものと予想される。当施設としては、今後ともこのような変化に対応した訓練プログラムの提供に努めていきたい。

 

 

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最終更新日: 20091118()

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