神奈川県・矢部健三
早いもので誌上で育休や子育ての体験を発表するようになってもう2年になりました。連載を始めた頃、ハイハイや掴まり立ちをしていた息子も今では元気に走り回りおしゃべりもするようになりました(時には屁理屈も)。口蓋裂という先天性の疾患を持って生まれた子でしたが、親の心配をよそにすくすく成長してくれました。去年の5月には予定していた口蓋裂の手術も無事終わり、心配されていた発音の崩れもそう大きなものはない様子。今は、言葉の発達を見ながら言語治療が必要かどうかを見極めているところです。
育休や子育ての経験を通じて、僕は意識面でも行動面でも少し変化(性徴?)したように思います。その一つ目が、「少しはしっかりしなくちゃ!」という意識。ありきたりに言えば、子どもに対する責任感を意識するようになったことです。これまでは、自分の人生なのだから人に迷惑さえかけなければと、後先考えずに行動したり時には投げやりになったりしていましたが、最近では子どもの生活を優先して自分の行動を組み立てようとするようになりました。
二つ目は、妻との会話。育休中妻以外の人と話さないという日が何日か続いたときに、ふと気づきました。家の外で妻が経験したこと、感じたことを聞くことで、1日家の中にいる僕も妻と同じ世界を共有できるんだなと。これは僕にとって新鮮な感覚でした。育休を取るまで僕は家に帰ってから仕事の話はほとんど妻にしませんでしたが、そんなことがあって、職場復帰してからは仕事で経験したこと、感じたことを家に帰ってから妻に話し、彼女の感想や意見を求めるようになりました。おかげで、「子どもの成長」以外にも夫婦の話題があり、お互いを刺激しあえる関係が続いているのだと思います。
三つ目は、障害や病気に対する意識。自分が障害者であること、自分が病気になることでいろいろなことを経験し考えてきたつもりでしたが、子どもが病気になったり口蓋裂という先天性疾患から発音や聴力に軽い障害を持つようになるということは、自分自身の障害体験とはまた違い、親としていろいろなことに不安を感じたり悩んだりするものなのですね。
「かるがも新聞」(2000年4月号)
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最終更新日: 2009年12月5日(土)
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