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育休の経済学

神奈川県・矢部健三

 妻が電話で友人と話しています。「え?学校?通ってるよ。子ども?ああ、健三さんが育休取って半年休んでるんだ。え?ああ、誰も働いてないよ、うち今は無収入なんだ。はっはっは」妻の友人はずいぶんめんくらっていたようです。

 「育休を取っていらっしゃるんですか、じゃあ奥さんがお勤めなんですか?」と尋ねられたとき、「いえ、妻は学生なんですよ。」と僕が答えると、たいがい相手の人は呆気にとられたように沈黙してしまいます。

 実際、育休期間中の7カ月は勤め先から給料が支払われません。その間の生活費をどうするのか、これも育休を取るにあたっての大きな課題でした。

 まずは収支の予測を立ててみました。育休期間中7カ月の支出としては、出産費用、食費や光熱費などの生活費、生命保険や簡易保険の保険料、職員宿舎の使用料、奨学金の返済、妻の学費、それに妻と僕のお小遣い。ざっと計算して250〜260万円は必要です。あまり贅沢をしているつもりはなかったのですが、こうやって見てみると結構なお金を使っているのに我ながらびっくりしました。

 それに対して収入は・・・。僕の障害基礎年金と、雇用保険から給料の25パーセント支給される育児休業給付のみ。これが7カ月分でざっと90万円強。差し引き160〜170万円は赤字です。これは、ちびちび貯めてきた蓄えを取り崩して何とかしのぐことにしました。

 もし僕が育休を取っていなかったら、この蓄えを崩す必要はおそらくありませんでしたし、働いていれば逆に蓄えは増えたはずです。そう考えると、僕の育休取得はかなり高額の買い物だったような気がします。いったいそれだけのお金をかけてまでする価値があったのでしょうか?

 僕にとって育休はそれだけの値打ちはあったと思います。

 その理由の一つが、7カ月間も仕事から離れリフレッシュできたこと。就職して8年目を迎えややマンネリを感じていた頃だったので、この長期間の休みはとても嬉しかったです。それに育休期間が終われば必ず職場に戻れる、というのですから、安心して育児に専念できます。「期限付き専業主夫」というのはとても居心地のいいものでした。

 もう一つはもちろん、ゆっくり子どもと向き合う時間を持てたこと。少しずつ成長する子どもの姿を毎日ゆったり見ていられるのはとてもすばらしい経験でした。育休を取るのですから当然なのですが、そのありがたさに気付いたのは、復職して子どもと接する時間が激減してからのことでした。

 その他によかったことといえば、育休期間中妻が登校するのを毎日僕と息子とで見送っていたおかげか、保育園に行くようになっても他の子どもたちがお母さんとのお別れに泣き出しているのに息子だけはにこやかにバイバイができたこと、また、育休取得で所得が減ったため非課税世帯になり、その結果児童扶養手当などの福祉サービスの対象になれたことなどでしょう。

 ただ、一つ失敗がありました。それは僕の給料日が毎月16日だということをすっかり忘れていたことです。育休は7カ月、ということで3月末までのことはしっかり考えていたのですが、職場復帰してから給料が出るまでの半月のことはまったく考えに入れていませんでした。そのため、用意していた生活費は底をつき、この2週間というもの、「早く給料が出ないかな!」といいながら毎日を過ごしていたのです。育休を取ろうという男性のみなさん、職場復帰してから給料が出るまでの生活費もちゃんと準備しておきましょうね。

 

「かるがも新聞」(1999年10月号)

 

 

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最終更新日: 20091128()

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