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神奈川県 矢部健三

 労働省(当時)がまとめた1996年度女子雇用管理基本調査によると、男性の育児休業(以下「育休」)取得率は0.16%だそうです。92年4月、出産から満1歳まで休めることを柱とした育児休業法がスタートしました。育休を取った男性の本は何冊か読んでいましたが、職場にも友人にも僕の回りには育休を取った人はいませんでした。今回は僕が育休を取ると言い出したときの周囲の人の反応をお話しします。

 最初に育休を取りたいと思っていることを伝えたのは、職場の上司O課長です。「そう、へえー」と感心した後で彼女は、「で、期間はどのくらい?3ヶ月過ぎたら保育園に預けられるから10月ぐらいまで?それとも切りよく年内いっぱい?」とすぐに休業期間の調整に入りました。さすがは課長。実はのんびり1年育休を取ろうと思っていた僕は、

「いや、まあ期間はまだ具体的には考えては・・・、妻と相談します。」と応えを濁すのが精一杯。

 他の同僚の反応は、「実は僕も取りたいなあと考えていたんだよ。」という賛同派と、「矢部ちゃんよくやるよなあ、話通じない怪獣みたいなのと1日ずっと一緒にいるんだよ、大変だぞー!」という傍観派の2タイプ。(僕としては話の通じない大人の相手をするよりは楽かな?と思ったんですが・・・)

 僕の両親に、子どもが生まれること、僕が育休を取ることを伝えたときには、初孫の知らせに喜びすぎて僕の育休の話などまったく耳に入らない様子。一方妻の両親は、「子どもを生み育てた全盲の女性はたくさんいるんだし、今の時代男性の矢部さんが育休を取るのもいいんじゃない」と好意的に受けとめてくれ、そのうえ育児書の朗読までしてくれました。

 友人たちの反応は、「すごいなあ、おれも取りたいんだよ」という男性もいれば、「すてきですね、私も彼に育休取ってもらおうかな?」という女性も。ちょっと年輩の人などは、「ねえ矢部君聞いたわよ、今度産休取るんだって!」おいおい、僕が息んでもなにも出てこないんだけどな・・・。「産休じゃなくて、僕が取れるのは育休です世!」と訂正しても、「そうだね、ハハハ・・・。で、いつから産休取るの?」なんて言われてがっくり。

 僕の育休取得計画にみんなが賛成してくれたかというと、そうではありません。妻の兄と、職場の事務部局の人から反対の声が挙がりました。男性、それも全盲の障碍者が赤ん坊の世話をできるのか?というのがその人たちの反対の理由。でも、これは僕が直接聞いたわけではないんです。義兄は妻の両親に、事務部局の人は職場のK所長に、それぞれ自分の意見を言ったのですが、どうして僕には直接言ってくれないんでしょうね。そんなに僕って恐いのかな?それとも「話の通じない大人」って思われてるのかな?妻の両親もK所長も僕の立場はよく理解していてくれたので、全盲という障害によって育児ができなくなるということはない、これまでにも多くの全盲の女性が育児をしている、などを僕に代わって説明してくれました。

 

「かるがも新聞」(1998年10月号)

 

 

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最終更新日: 20091125()

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